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2008年9月 5日 (金)

床屋政談:麻生包囲網再び?

先日の福田康夫首相の辞任表明を受けて、自由民主党の総裁選レースが早々始まった。

当初は、構造改革修正派の麻生太郎氏と構造改革派の中川秀直氏が後見役をする小池百合子氏の対決かと思いきや、構造改革派から石原伸晃氏も出馬の意向で、ついには麻生氏の盟友と思われていた与謝野馨氏が出馬を確実にした。

私は、半年ほど前にポスト福田は麻生氏と小池氏で争われると予測していたのだが、その前提は与謝野氏が麻生陣営に入ることを見越してのことであったが、先月の内閣改造後の麻生氏の積極財政路線を鮮明にしたあたりから、両者の対立点が露わになったようだ。これで潮目は変わり、麻生氏と与謝野氏の対決というのが本総裁選の目玉になったと見てよいだろう。つまり、対立軸は小泉政権前の状況に戻ったと見ていい。

では、構造改革派=経済成長派はどうなるか。そもそも経済成長派と呼ばれるものは、中川氏が中心となって最近言われだしたもので、党内的には浸透力も少なく、少数派に過ぎない。彼らの正統性は、2005年の選挙に勝った小泉改革路線の継承ということにあるのだが、あの選挙というものは小泉首相自身のキャラクターへの国民的人気と鋭い政局勘による権力行使に所属議員が畏怖したところにあったと思われる。つまり、必ずしも政策で国民や所属議員を納得させたのではなく、小泉氏個人への信任と権力への恐れが、小泉路線というものを成立させていた。その小泉氏が退任した後、政策だけが残ったが、国民はさほどその政策のみの改革路線に関心はない。それは小泉政権以上に改革を急いだ安倍政権や福田政権の不人気ぶりをみれば分かるだろう。所詮、改革は将来に対する保障であって、今現在の国民に大した利益を与えるわけではない。その代替として、夢や自尊心くすぐる態度(ナショナリズム)や「おもしろさ」を国民に与えてくれなければならない。安倍氏や福田氏は改革はしたが「おもしろさ」がなかった。中川氏を中心としたグループの政策は正しいのかもしれないが、その正しさを信じるあまり、余裕がなく硬直していて「おもしろさ」に欠ける。その辺で小池百合子氏は「女性」というだけで、面白がる層もいるだろうから、改革の旗を掲げる分には良いだろう。だが、党内少数派の成長派にこれ以上の輪を広げることが出来るかは微妙な気がする。石原氏もこのグループに片足を乗っけているようだが、街頭演説してマスコミより少ない見物人しか集められないのを映像で見ていると、改革の旗としては不十分だし、あれだけテレビに出ているのに人気ないんだな、と思ってしまった。

麻生氏に関しては、「おもしろさ」はあるんだろうし、効果は定かではないが景気対策をするという点で、国民としては頼もしいとも映るだろうし、財政出動という点で公明党とうまくやれるそうだし、選挙もそれなりに戦えるかもしれない。しかし、与謝野氏の登場で前回同様の苦渋をなめるような気がしてならない。

麻生氏の掲げる積極財政路線は、数が多いという意味での自民党の主流派のようだ。しかし、それら主流派の津島派・古賀派の後見人・野中広務氏と麻生氏は「差別発言」をめぐって犬猿の仲ということで、党内では敵が多い。前回の福田総裁選出は、これら主流派と改革派との同床異夢によって成立した。今回もそれが行われるのではないか。

中川秀直氏は与謝野氏とは政策対立が著しいといわれるが、麻生氏の財政出動の提言をいちはやく批判し、与謝野氏ら財政規律派とは現時点で増税をしないという点で目的は同じとして、擦り寄る発言をし始めた時期がある。これを考えるとこの両者との連携は不可能ではない。こうなると麻生派と積極財政を唱える中川昭一氏が中心の伊吹派のみが財政出動派で、本来は財政出動派だがアンチ麻生の津島・古賀派と成長経済派の中川グループと財政規律派の与謝野氏の2位3位連合か1位3位連合かにより、前者が孤立する可能性がある。そうすれば与謝野新総裁誕生である。これが成功すれば、やはり政治は理念ではなく人間関係なのだ、と思わせる。

しかし、不思議なのは、この野中氏を仰ぐ議員集団だ。本来は積極財政路線で、小泉時代には「抵抗勢力」といわれた人々は、前回も積極財政論者の麻生氏を退け、消極的な改革派の福田氏を担ぎ、今回も財政規律派の与謝野氏もしくは谷垣禎一氏を担ごうとしている(あくまで予想だが)。福田氏はどう考えても選挙の顔になる総裁ではなかった。与謝野氏も自身が9勝3敗で選挙に弱い人物だ。しかも健康に問題があり、3代続けて政権放り出しの可能性がある。谷垣氏も選挙の顔として面白みにかける。こうした人を担いで選挙を行おうとしているのだから、どう考えても自爆である。もしかしたら、自民党が野党に転落するのを待っているのかもしれない。

自分たちと政策志向の異なる人を総裁にして選挙に負ける。しかも、彼らは選挙地盤はしっかりしていて、自身は落選の可能性が低い。そうすれば、選挙に弱い改革派議員を排除して、怨嗟の的であった小泉路線を否定し、野党になることで自分たちが真の主流派になれる。その総裁は野田聖子氏だろう。しかも、総理になるのは自分たちと政策志向が近い小沢一郎氏だ。小沢氏と連携して民主党内改革派を追い払うか、策謀に長けた彼らのことだから、すぐに民主党政権を崩壊させるかもしれない。これでオールドでネオな自民党政権が誕生する。これが野中氏や古賀氏の戦略だとしたら、ずいぶん遠大な計画である。それだけ小泉政権への恨みが強かったということか。。

与謝野氏の出馬を聞いてこんな妄想を抱いてしまいました。まぁ、普通にいけば麻生氏で決まりだろうけどね。小泉選挙のおかげで自民党にしてやられたと思って警戒しているテレビメディアも視聴者が望むから、総裁選特集を組んでしまうように、何だかんだいっても自民党総裁選は、床屋政談的に面白い、というところでしょうか。

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投稿: BrendaBub | 2019年9月 2日 (月) 09時25分

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» 城内実さんが上げ潮派&マスゴミを批判 [アニ妻ぶろぐ。]
スゴかったです、安倍さんが首相のときのマスコミの叩きっぷりは。 前回総裁選のときの麻生叩きもなかなかでした。 談合とナベツネが持ち上げた福田氏は無能で全方位土下座、最後も捨て台詞。 あの麻生包囲網に加担した政治家は、どうして責任を問われないんだろう? 一方のマスゴミは相変わらず「麻生ファン=アキバオタク」にしたいようだし、 最近は「麻生=バラまき派」という取り上げ方が重用されている模様。  麻生氏 「バラマキ型という表現をマスコミのみなさんはしておられますけれど、 ... [続きを読む]

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