猪木正道『評伝吉田茂1星雲の巻』ちくま学芸文庫、1995年
いまだご存命の長老学者(今年94歳)の吉田茂を「自由主義的保守主義者」として論じた古典評伝。
第一巻では幼少から大正時代まで。外交官の評伝というわけで国内政治よりも国際政治の観点から、また著者が繰り返し「自爆戦争」と名づける日米開戦を意識して、国際協調路線を評価軸としている。そのため、国内政治的には評判の悪い山県有朋や寺内正毅も比較的評価が高い。昭和天皇への崇敬の念が高いが、昭和期以降の歴史に極めて厳しいあたりも昨日の田中清玄と同様で戦中派のちょっと上ぐらいの歴史観が垣間見える。
「ほんものの保守主義は、左右の急進主義におる挑戦に対する応戦という形でめざめるのだ」(318頁)
「外交交渉で、相手の立場を理解せず、自分の国の主張だけをただ強硬に押すというのでは、やがて気がついた時には、まわりの国は全部敵にまわっている、ということになりがちだ」(334頁)
とか保守主義という固定されたイデオロギーがあるかのように、「それでも保守か」みたいな言説がある中で傾聴に値する。と、オールド「保守」の猪木史観をしばらく堪能してみる。
余談だが、317頁「明治天皇がアルフィース・トドハンターの大著『英国における議会政治』を有栖川宮熾仁親王に貸与、云々」と木村毅『明治天皇』を注につけつつ書いているが、この「トドハンター」って、Alpheus Todd On Parlamentary Government in England (1867 -69)のことじゃないだろうか。ちなみにトドハンターというのはIsaac Todhunterという数学者(?)の本が明治期にいくつか訳されているようだが。
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