前回に引き続き、今年を振り返ろうというエントリー。
CDといっても基本的には邦楽・洋楽のポップミュージックを挙げるというもので、他愛のないものです。しかも「極私」と銘打つとおり、全く主観的なものであるが、メジャー志向の私はほとんどマイナーなものは挙げません。とうより知りません。また結局、音楽の好みなんかは好きか嫌いかの二分法でしかないので、共感を得られるものを挙げられるとも思えない。というわけで、今年のベスト。
第1位 吉井和哉『39108』
第2位 My Chemical Romance『The Black Parade』
第3位 The Vines『Vision Valley』
第4位 Kasabian『Empire』
第5位 The Lodger『Grown-Ups』
次点 Oasis『stop the clocks』
金返せ Arctic Monkeys『Whatever Peaple Say I Am, That's What I'm Not』
こんな感じです。
第1位は、ザ・イエロー・モンキー活動休止後、3枚目になる吉井和哉のソロ作品。しかも、前2作は「Yoshii Lovinson」名義であったのに、今回は「吉井和哉」で。この変化というのは、非常に大きい。やはり前2作は、「イエモンのフロントマン吉井」という重圧や虚飾から抜け出したいという苦悩から生れてきた作品で、重苦しく、地味であった。とりわけ1stは聴くのが苦痛で買ってはみたものの正直あまり聴いていない。2ndは前作にくらべれば、ポップ志向を取り戻してはいるものの、まだ何かイエモン的なるものを押さえ込もうとする意識が垣間見えて、各楽曲素晴しいものはあったものの、作品としてはイマイチな出来であった。それが今回どうであろう。完全にロックスターとしての吉井が帰ってきた。これはホントに何度も聴いたし、それごとに感動を新たにし、笑わせてもらった。かつて吉井はエッセイ集で「ロックスターは笑いの要素があってこそ、ロックスターである」というようなことをいっていたが、本作にはその要素はふんだんにある。ロックはむちゃくちゃな言葉をむちゃくちゃな音楽を鳴らして、自己を表現する音楽形態である。
「ちょっとだけ触ってここ持って触って ヒヤリと冷たいアイスです」(HOLD ME TIGHT)
「寒い朝にこっそり おにぎり握るように 愛してくれない?」(I WANT YOU I NEED YOU)
こんな表現、普通思いつかない。前者は実際曲を聴いているとドキリとくるところをうまくかわして笑いにし、後者はこれほど深い愛のかたちをこんな言葉で思い浮かぶだろうか。このむちゃくちゃな言語感覚が吉井の持ち味であり、それでいながらそのおかしさがずしりと心に響く荒業が各曲に溢れている。本作は吉井のキャリアの上でも『sicks』以来の大傑作であり、日本ロック史上でも傑作に選ばれる価値のある作品だ。
「遠回りしても 良かったと言える 大人になりたい」(WEEKENDER)
吉井は実現しただろう。私もかくありたい。
第2位は、今年の暮れに真打登場とばかりに発表されてしまった大名盤である。私は今作までマイケミを聴いてはきたが素通りしてきた。正直、キワモノ扱いだったのだが、全く認識を改めされた。これほど素晴しい楽曲を奏でられる潜在力があったことは驚きだが、本作は確実に今年を代表する作品であり、永久に語り継がれる大傑作だ。
「僕はただの人間 ヒーローなんかじゃない ただの少年が
この歌を歌わなくてはならなくなっただけ
僕はただの人間なんだ ヒーローなんかじゃない」(Welcome to The Black Parade)
もはや彼らは自らが生み出した作品が、ただの歌ではなく、歴史的に意味のあるものであるということを自覚している。「ヒーローなんかじゃない」でもロックスターだ。
第3位はThe Vinesの復活作。1stの初期衝動の乱暴さを うまくコントロールできた、激しいながらも落ち着いた曲調にクレイグの精神の安定と成長を感じさせる。1stの衝撃にとりつかれた人なら物足らなさを感じるだろうが、作品としての完成度と聴き易さでは、これを超える出来だと思える。1stはシングル曲が走ってる感じだったが、今回はすべて佳作なのだ。アルバムとして素晴らしい。一曲目の「あんたあの娘のなんなのさ」の宇崎竜童か!?とツッコミたくなるイントロが耳から離れない。。 しかし、日本で大失敗をやらかしてくれただけに、今後の日本でのセールスはあまり期待できないだろう。t.A.T.uのように。
第4位は、1stでアングラ的雰囲気を持ちつつも大ヒットしたKasabianのポップさを意識した作品で、何よりも聴きやすい作品へと変化したのに驚かされ、自らがメジャーのスタンダードになろうとした闘争心を垣間見える意欲作。派手さはないが、この恐るべき闘争心が充満しており、四の五の言わずに聴け!という感じだろうか。
第5位は、駆け込み的に年末に発売された佳作。帯の「生粋の音楽オタクが生み出した、完全無欠のポップネス」というコピーが物語っているように、本当にポップミュージックが好きなのだな、と思わせる大名曲なしのB級ロックの素晴しさ。全編通してとにかく心地よいサウンドがいいんだな。でもあまりに完璧に出来すぎているために、今後の展開が難しそう。
次点は、Oasisのベスト。本来なら5位以内に入れたいところだが、何せ新曲なしの名曲ぞろいなので「全部持ってるよ」と思いつつ買ったので。やはり新曲ないと今年の名盤には入れたくない。せめてサントラ『GOAL!』収録の大名曲「Who Put The Weight Of The World On My Shoulders?」ぐらい入れて欲しかった。しかし、今作で垣間見える現在のOasisの基準では私好みのいかにもロックな佳作群は入らないんだなぁ。でもこれのおかげで全アルバムを聴き返して、実は『Standing On The Shoukder Of Giants』がかなりの名盤で、今や一番のお気に入りになったという収穫があった。世評に惑わされず、作品に向き合うことって重要ですな。
金返せ これは世間的には好評かを得ているようだが、どうも期待はずれ。先行シングルの「i bet you look good on the dancefloor」を聴いた時は、「これは凄い!」と思ったものだが、期待が大きかったのとアルバム発売までの期間があいたせいか、関心も薄れもはや面白味を感じなかった。あとRed Hot Chili Peppersの新譜も期待はずれだったかな。美メロバンドなんてやってないで、かつてのようなパンキッシュな作品をお願いしたいものです。
さてこのようなセレクションであったわけですが、私にはロックに関する一つの指針があります。それは日本史上最大のロックスター大杉栄の次のような言葉です。
「ロックには方向はある。しかし謂はゆる最後の目的はない。一ロックの理想は、其の謂はゆる最後の目的の中に自らを見出すものではない。理想は常に其のロックと伴ひ、其のロックと共に進んで行く。理想がロックの前方にあるのではない。ロックそのものの中にあるのだ」(「生の創造」いうまでもないが原文は「ロック」=「運動」)
今回のセレクションには新人も挙げておいたが、やはりロックというのは、ミュージシャンの自己と社会との違和感の緊張の中に自己表現するジャンルであると思う。その中には表現者自体の使命感や苦闘が痕がなければならない。そのため、ロックは作品ごとに現在の自分が一層烈しく表現する過程が魅力なのだ。そんなわけで、作品ごとにやめればいいのに作風を変えてしまう不器用な生き方をするのがロックスターなんだろうな。
大したまとまりがないままに、今年最後のエントリーを終えて、読んでいただいた皆様にとって来年も良い年でありますように。では、良いお年を!
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