床屋政談:世論調査に変化あり??
前回のエントリーで書いたような波乱もなく、冷めた感じで麻生太郎内閣が成立した。次期首相候補の世論調査で野党も含めた政治家の中でダントツだったのだから、自民党員や党所属国会議員の多くが麻生氏を支持したのは当然だっただろう。しかし、その麻生人気というのも本日の各報道機関が出した世論調査によると5割弱と、福田康夫内閣発足時を下回る結果となり、疑問符がつくようになった。
読売新聞と朝日新聞という二大紙が福田氏を支持していたことでメディアのネガティブキャンペーンがほとんどなかったという陰謀論めいたことは抜きにしても、テレビ番組等で麻生氏に関する報道があまりなかったということを見ていると、そんなに人気ないんだな、という印象があったので、そんなとこかなとも感じる。
また、麻生氏には熱狂的なファンが一部にはいる。そうした人たちが作った麻生応援動画などを見ると正直言って、ひく。麻生氏個人はいいにしても、その支持者には少し不気味なものを感じてしまったのが、正直な感想である。テレビニュースで麻生新総裁誕生誕生の日に自民党本部前で支持者が「あ、そーお」と麻生コールをしているのを見たが、これもずいぶん機械的なもので、本人が現れたら普通、歓声に変わるだろうに、ずっと「あ、そーお、あ、そーお」と続いていたところに、麻生氏自身を支持しているというよりも麻生支持者間の連帯を確かめ合っているだけのような気がして、これまた不気味な光景であった。
しかし、今回出た世論調査で特徴的なものは、「わからない・その他」の急上昇である。というのは、小泉政権以後の世論調査というものは、小泉氏が「小泉内閣に抵抗する者が抵抗勢力である」と宣言したように、支持するかしないか、という二者択一を迫るような結果で、支持と不支持が異常なほどに高い数字を出し、「わからない」という様子見する人が極めて少なかったのだ。私なんぞは、日本国民はずいぶん政治意識が高くて政治をよく知っているんだな、と感心してしまっていたのだが、そういう結果が出ていた。そのため、小泉内閣は常に高い支持率を維持し続けたものの、最初の2001年参議院選挙と最後の2005年衆議院選挙以外は振るわなかった。それだけ、不支持も高かったわけである。
私が政治報道を眺めるようになったのは、橋本政権ぐらいからだが、森政権までは「わからない」と答えていた人は2割ぐらい常にいたような気がした。しかし、小泉政権からは1割程度に落ち込み、支持・不支持の人が異常に増えたのである。これは安倍・福田政権でも続いていた。それが今回の調査だと、「わからない・その他」が3割近くにまで拡大した。つまり、それまでは無党派層といわれる人も意見表明をしていたのだが、今度は普通の無党派らしく様子見を始めた。または政治に関心がないという普通の人に戻ったといえる。
小泉政権初期の「清算主義」的経済政策の源流にある経済学者シュムペーターは「経済危機」の時代には、大衆は、これまでなじんできた政治経済システムを、我慢のできないものと感じて、あるときには「反動」に、またある時には、「革新」と呼ばれる方向へと支持を変え、こうした状況の中で特定の個人に非難を集中させることに喜びを見出す、というようなことをいっている。
安倍・福田政権を合わせた小泉時代というものは、まさにこれで、政権を熱狂的に支持し、反対する者を憎悪・非難し、または風向きが変わると政権を憎悪・非難した。とにかく、なんらかの意思表明をしなければ気がすまない、という大衆心理が働いた時代だった。私は福田政権発足時で、その時代は終わったと思っていたが、この政権は小泉時代の影を色濃く残していたものだったので、それは引き続いていたようだった。
今回の世論調査の変化は、そうした時代の終わりを示唆しているように思えた。麻生内閣は、小泉時代の幕引き役を引き受けたようにみえる。次の選挙で政権交代が起こったとしても、それは熱狂によってではなく、淡々としたものとなるだろう。それは昨日、歓声と罵声の人・小泉純一郎氏が政界引退表明によって、決定づけられたのではなかろうか。
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